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いよいよ連載開始 テーマは『感情表現』 [ミュージカル]

★「ミュージカルを歌うために」のブログを再開するに当たって★

1年ほど前、このタイトルでブログを書いていましたが、スクールの廃校、事務所の移転、ミュージカル「ユイナシビト」の上演など、本当にてんてこ舞いの1年間で、ほとんど新しい記事を書けませんでした。

 また、肝心の歌うことについてよりも日々の雑感のようになってしまい、とりとめが無くなってしまいましたので、一旦、以前の記事を削除して新しいブログとして再開することにしました。

 このブログの目的は、ミュージカルに出演している方、現在、志して勉強中の方、これから学び始めたいと思っている方々のために、技術的な参考にしていただきたい事。心の動かし方や考え方の指針としていただく事。そして、自分が日々教えている事を文章化して整理するためです。方向性は決まっていますが、臨機応変に書いていこうと思っています。

 ご質問は大歓迎です。ミュージカルに関する声と歌の技術についてはほぼ論理的にお答えできると思います。ただ、文章は声を出したり身体を触ったりできないので、かなり制約があります。今後は画像や写真、できれば動画も載せていこうと計画しています。

 専門学校を一つ辞めましたので、時間的にはずいぶん余裕ができました。今回は週に2回くらいのペースで新しい記事を書いていけたらよいと思っています。ある程度まとまりましたら、構成、推敲を行って出版する予定です。

 さて、前置きが長くなりましたが、第1回目は私がこれまで教えてきた事と、かなり違う切り口で行こうと思います。もちろん、たどり着くところは同じですが・・・。

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● 第1回 「歌の感情表現とは?」

 私がこれまで携わってきた現場で(たいして大きなものはありませんが)大変よく見かけた光景があります。演出家や音楽監督、歌唱指導が俳優さんに向かって「もっと感情を込めて歌ってくれないかな~?意味分かってるの?気持ちが出ないと伝わらないんだよね・・・」と繰り返し要求する場面です。時には「君ね~、感情あんの~?」などと言う人格否定にもつながりかねない発言さえ日常茶飯事です。

 こう言われた役者さん達は、悔しいやら悲しいやらで、一生懸命に感情を込めようとし、心を動かそうとします。もちろん、歌詞の意味や場面の状況をちゃんと理解できていない人もいますが、誰にだって感情はあります。誠意も使って歌おうとします。でも、たいていの人は、心はあってもどうやって表現したらいいか分からないのが現実です。

 では、どうして観ている人、聞いている人に感情が伝わらないのでしょうか?

 そもそも皆さんは歌で感情表現をする時に、どんな要素を使っているか考えた事がありますか?聞いている人はどんな要素で心を揺すぶられるのでしょう?これが分からないと感情を具体的な表現にできません。

 いよいよ本題です。歌の中で感情表現をするために使っている要素を分析しましょう。

 要素は大きく分けて4つあります。

★ひとつ目は、音量の変化です。「美女と野獣」の中でベルのソロ「HOME」(我が家)で、『幼い日々の我が家の~』と言うフレーズがあります。この中の「幼い」だけを取り上げてみましょう。日本語の強勢から考えると、『お』から『い』に向かってだんだん小さくなっています。『い』はほとんど聞こえないレベルまで小さくなっている人もいるでしょう。つまり音量が変化しています。この例では、音量が変化しなければ日本語としてきわめて不自然です。
また、「ミス・サイゴン」のデュエットに「I Still Believe」という有名な曲があります。その途中に『いま、信じてる~』と言うフレーズがあります。『ま』の音は7拍のびていますが、一般的にはクレシェンドしてからデクレシェンドします。7拍のうち、出だしや終わりの音量と比べて、中間部分の音量はおよそ7~10倍にも及びます。ここでは、クレシェンド、デクレシェンドをしなければ、感情の変化が表せず極めて無機質な音楽になってしまいます。

★二つ目はテンポの変化です。「レ・ミゼラブル」のとても有名なナンバー、エポニーヌが歌う「オン・マイ・オウン」の出だしの部分(バース)、最初は『またあたし一人、行くところもないわ~』から始まります。この部分は、愛するマリウスの頼みで、やむなくコゼットの家に手紙を届けに行った後、やり場のない悲痛な心の叫びを表現するために、かなり速めの切迫したテンポで歌います。その後、転調して『人みな眠る夜、一人で歩こう~』の部分は、次に『あの人想えば幸せになれるよ~』と、マリウスを思い出して気持ちが和むので、少しテンポが遅くなります。同じテンポで歌ったなら、心境の変化は読み取れません。
 「同じ曲の中でリフレインに入ってすぐ『一人、でも二人だわ~』から2コーラス間のテンポと、転調して『知ってる、夢見るだけ~』のテンポでは後者がかなり速くなります。空想している自分と、現実に戻り「知ってる!」と強く言い切る自分の変化があるからです。

 もう少し細かい部分を見ていくと、やはりこの曲の最初『またあたし一人、行くところもないわ』のフレーズでは、『また』から『ところ』に向かってテンポをアップして行き(アチェランド)、『ないわ』でゆっくり(リタルダンド)します。次の『暖かい家も、あたしどこにもない』のフレーズでも『あたたかい』から『どこ』に向かってテンポアップし、『にもない』で落ち着きます。こうしてテンポの変化を作る事(揺れ)で、揺れ動く心を表現しています。音楽の世界では単に「動かす」と言えば音楽のテンポを揺らす事を指すほどです。

さて、もう少しお付き合い下さい。

★三つ目の要素は、音の長さの変化です。テンポの変化とも重なる部分があります。
 今度は男性の曲で、先ほどの「レ・ミゼラブル」の終盤に歌われる、マリウスの「人影のない部屋」(Enpty Chairs)の最初の部分、『言葉にならない』です。『言葉』を少しテンポアップしながら(音楽では進めると言います)入って『に』の拍を長目にします。これを「ためる」と言います。そして『ならない』を少し進ませます。すると、彼の無念さや贖罪の念が強く感じられます。まさに「言葉に詰まる」状態です。次のフレーズの『痛みと悲しみ』も同じ方法で『と』をためます。すると『痛み』『悲しみ』が強調され、まさに「悲痛な想い」が伝わります。ただ、どちらも『に』や『と』を長くする(テヌート)だけではかえってべったりとした音楽になってしまうので、拍は長くても音を短めにして「声に詰まる」感じを出さなくては意味がありません。
 別な曲では、「オペラ座の怪人」でクリスティーヌが歌う「墓場にて」の最初です。シンプルな前奏に続いて『涙こらえながら~』と歌い始めます。第1拍目の『な』をためます。すると、亡くなった父を想う悲しい心が深く伝わります。同様に次のフレーズ『いつも傍らで~』の最初の音『い』をためます。すると、生前は何時でも自分に適切なアドバイスをしてくれたお父さんが亡くなって、今は誰に相談することもできない、と言う悲嘆に暮れた心情が表現できます。
 逆に、音の長さを短くする事で表現できる事もあります。「マイ・フェアレディ」で最も有名な、イライザが歌う「踊り明かそう」で、最初の部分(バース)『もう、眠れないわ』の『も』と『う』を短めに歌います(マルカート)。楽譜でも8分音符、8分休符二つ、8分音符と、元々切れています。英語では『Bed』『Bed』と言い切る形になっています。『眠れないわ』も1音ずつマルカートに歌います。すると、心が弾んで興奮する様子が伝わります。バースはほとんどマルカートで表現します。ところが、リフレインに入ると『夜明けまでも~』からずっとなめらかに歌い(レガート)ます。それはどうしてかと言うと、英語の詞にもあるように『Spread Wings』つまり、羽を広げて夜空を飛んでいるくらいに解放されて高揚した達成感を表現しているからです。
 このように、音の長さは表現上でとても大切な要素です。

★やっと四つ目です。それは音色の変化です。例を挙げましょう。「ライオンキング」でナラが歌う「シャドウ・ランド」です。感動的なコーラスの前奏に引き続いて『シャドウ・ランド~』と歌い始めるフレーズです。『ラ』の音を7拍のばし、最後に子音の『nd』が入ります。このロングトーンではクレシェンドしてからデクレシェンドします。その大きくなった時に声の音色が非常に深くそして太くなります。それは心の底からわき上がってくる深い悲しみを表現しているからです。もし同じ音色でクレシェンド、デクレシェンドをしたら、すっかり興ざめです。この曲の中で、この方法は多用されています。もし納得できないなら同じ音色で変化させる実験をしてみて下さい。全く無機質なものになるはずです。余談ですが、何回かブロードウェーでこの作品を観た中で、偶然、前から二列目の完全なセンターに座った事があります。連れと二人で、いわゆる「センター割り」で観たのです。その時のナラがあまりにも素晴らしくて、「シャドウ・ランド」で延々と涙が止まらなかった覚えがあります。すみません、脱線して。
 さて他の例では、「クレージー・フォー・ユー」の中でポリーが歌う「エンブレイサブル・ユー/Embraceable You」の出だし(バース)『たずねて来たわ~』です。いろいろな男が自分を目当てにやって来たけれど、自分が思うようないい男は一人もいなかった!と言う事を表現するために、かなりきりっとしたちょっと固めの音色で歌います。ところが一転、リフレインに入る『抱いて、私のいい人~』からは、ポリーの女性的で官能的な本質を表すため、大人っぽくて深く柔らかい音色で歌います。ここから子供っぽい音色だとぶち壊しになってしまいます。 

長い文章にお付き合いいただいてありがとうございます。話すとすぐ終わりますが、書くと説明が長くなってしまいます。そのうち動画かヴォイス・サンプルをのせましょう。

 ここまで読んでいただいて、どうでしたか?皆さんは歌の「表現」が主にこの四つの要素からできている事を考えていましたか?歌の上手な人、表現力が豊かな人はこれらの要素を巧みに組み合わせて歌っているのです。

 では、多くの人がなぜ上手く表現できないのでしょうか?答えは簡単です。技術が伴っていないからです。テニスに例えるなら、ストロークだけ上手ければいいと言うものではありません。サーブもレシーブもボレーも、いろいろな要素が十分なレベルまで達しないと一流の選手にはなれないのです。しかも、試合の中で瞬時にその技術を発揮できるほど、完全に身についていなければならないのです。皆さんの歌の技術はどうでしょうか?

試しに、比較的わかりやすいロングトーンで実験してみて下さい。貴方の中音域で少し高めくらいがいいでしょう。8拍ほどのばして、その中でクレシェンドしてからデクレシェンドします。声の大きさがなめらかに、そして大幅に変化できたらOKです。上手くできたなら、逆の大きな声からデクレッシェンドして、その後クレシェンド、でも実験してみて下さい。上手く行けば音量が数十倍変化するはずです。でも、変化させようと思っても、ほとんど変化しない人も沢山いるはずです。それでは感情表現などとても望む事はできないと思いませんか?

でも大丈夫です。技術が最初から身についているはずなどないからです。ダンスを始めたばかりの人が、いろいろな技を使えないのと同じです。また、訓練方法が間違っていたなら、同じ事が起こります。そうだったら、訓練すればいいのです。間違っていたならやり直せばいいのです。貴方の素晴らしい感性と豊かな感情を表現するための技術を身につけましょう!

長くなりましたが、第1回目はここで終わりです。コメントや質問、大歓迎です。Mixiにも同様のコミュニティを作りますので、そちらでもご質問をお受けしています。

続く・・・


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